電車が24時間動いていた世界
2008年、国の「ナイトタイムエコノミー推進計画」が本格化し、主要都市圏の電車は24時間運行へと切り替わった。終電を気にせず、人々はもっと自由に夜を謳歌するようになった。
午前3時、友人と語り明かした帰り道。ガラガラの車両は、まるで自分だけの空間だった。
窓の外を流れる静かなネオンと、心地よい揺れ。疲れた体にしみわたる安心感は、忘れられない。
早朝の会議でも、前夜のライブを諦める必要はなかった。始発を待つ寒さも、焦りも知らなかった。
深夜にふと旅に出たくなった日も、プラットフォームのベンチで温かいコーヒーを飲む贅沢があった。
時間は流れていくもの、と心から思えた。あの頃の夜には、無限の可能性が広がっていたように感じる。
あの深夜の、揺れる車窓の灯りが、もう遠い記憶となってしまったのが、少し寂しい。
もう二度と、あの特別な自由を取り戻すことはできないのだろうか。